幼過ぎたんです。(2)

<昨日の続き・・>

私の学校自体、校則が厳しかったが、担任は、
もっと厳しい先生だった。
私の学級は担任の先生が来て、ホームルームをしないと帰れない。
他のクラスは、学級委員が代行するコトもあるのだが、
私の、クラスはあくまでも「担任不在」は有り得ない事だった。
この日、担任の松原先生は、なかなか下校時刻になっても、
教室に現れなかった。
(オシリが大きいのでケツ原と呼ばれて居たが、そんな豆知識は
この入り組んだ話に関係ないので、忘れて頂きたい。)
ホームルームが始まるまでの時間は、皆んな おしゃべりをしたり
ザワザワとしていた。
木村君の親友で、机を並べている長沢君は、
とてもイラついて、大きな声で、
『俺、帰ってガンダムの再放送見るねん!間に合わへんやんけ!』
『先生、何してんねん!』
ガンダム見たい!ガンダム見たい!』などと叫んでいた。
ザワついた教室に松原先生が、現れて言った。
「和田!関口!すぐ職員室に来なさい!!」
家庭科の小西先生が、担任にチクッたのだ。
木村君と武田さんは、私と和田さんに駆け寄って来て、
『絶対、名前を出さないで!』と嘆願して来た。
もちろんである。
長沢君は相変わらず『ガンダムガンダム!』と
叫んでいた。
私と和田さんは、職員室の隣の狭くて暗い準備室に入れられた。
子供の私達は、この時点で、コワイのである。
まず、誰が家庭科の先生の机からゲームウォッチを持って行ったのか?
と聞かれた。「自分たち(私と和田さん)で、取りに行きました。」と
応えた。武田さんの名前は出さず約束は守った!
次に、私と和田、どちらのゲームウォッチで、
なぜ学校に持って来たのか?など聞かれ、私達は、武田さんとの約束を
守った事で、もぅ、精一杯で、薄暗い狭い部屋での軟禁は、
限界だった。
遂に言ってしまった。
「木村君に借りました。」
担任は、すごい剣幕で、「すぐに木村を呼んで来いっ!」と言った。
私と和田さんは、走って教室に戻り、木村君に、
名前を出してしまったコト、呼び出しが掛かったコトを告げた。
教室では相変わらず、長沢君が、
ガンダム!間に合わへん!先生、遅い〜!』と叫んでいたが、
私と和田さんと木村君は、先生の元に急いだ。
戻ると、先生はさっきより怒りを増して怖かった。
家庭科の先生に「担任が悪いんじゃぁござぁーせん?」みたいな
嫌味でも言われたのだろうか?
先生は、木村君に「木村!お前のか?」とドスの利いた声で、
言った。
私たちも怯んだが、木村君も怯んだのだろう。
思わず木村君は親友の「長沢君のです!」と、言った。
先生は「木村!長沢を呼んで来いっ!」と怒鳴った。
木村君は、教室に戻り、長沢くんに言ったらしい、
<木村>「長沢〜!お前、早く帰ってガンダム観たいんやろ?」
<長沢>「おー!そうやねん!」
<木村>「そしたらな、今から先生の所に行って、僕のです。と
     一言、言うだけで帰れるねん!」
<長沢>「ホンマ!僕のです。って言うたらええねんな?早く、
     先生のとこに連れて行ってくれや!」
・・・。理由も聞かずである。
ガンダム」を観たい!一心が伝わってくるようだ。
私達が待つ要塞いや、準備室に、木村君より早く飛び込んで来た、
長沢君は、私と和田さんの間をかき分け、先生の前に自ら飛び出して
「僕のです!」と元気よく言った。
その瞬間、私達は、この世の不条理さを、目の当たりした!
担任は、長沢君の頭をゲンコツで「ポカン!」と殴ったのダ!
先生の怒りは、すべてそのゲンコツに込められているようであった。
後ろから、見ていて長沢君の頭が、バブルヘッド人形のように
揺れていた。
先生は「木村!和田!関口!帰ってよし!クラスの他の者も、
帰ってよし!長沢だけ残れ!」
・・私達もクラスの皆んなも帰宅した。<続く>