「縁日のひよこ」(2)

<昨日の続き・・。>
近所に、子猫や子犬を抱っこしている、
子供も居たが、ニワトリを抱っこしている子供は、
私、一人であった。
抱っこされて、嫌がらないニワトリになったのも、
私が手塩にかけて育てたからだ。

イサオは少し細め、健作は、やや太めで、毎朝、
「コケコッコー!」「クックドゥドゥドゥ!」と
鳴き始めた。
いくら懐いていても、朝の日課だけは、
私にも止められない。

仕方ないが、イサオも健作も、手放す時期が
来たのである。
がっ!・・しかし、当分、田舎への帰省の予定もなく、
また、イサオと健作の毛根には、色が薄くなったら、
塗り足していたインクが、染み込んでいる、
こんな、青い頭と赤い頭をしたニワトリを、今回は、
小学校に引き取ってもらう訳には行かない。
家では飼えない・・。
山に捨てれば、野犬の餌食になってしまう。

考えたあげく、かどうかわ忘れたが、に、
私と父は、イサオと健作をダンボールに入れて、
あるデパートの屋上のペットショップに、
『お金はいりませんので、引き取って下さい。』
(当たり前やがな!)と、連れて行った。

あそこなら、カラフルな鳥達が、いっぱいいる♪
なんせ、ショップの入り口には、大きな七色の、
オウムがいるのが名物だ!
赤や青の頭と顔ぐらい、どうってコトないはずだ!
しかしである、店主はダンボールを覗き込んで、
イサオと健作を見つめ、
『う〜ん。これだけ大きくなってるとちょっとねぇー』
と困惑顔だが、色については触れて来ない!って事は、
青と赤は、クリアーしたのダ!!
私と父はすかさず『何んとかお願いします。
大きくなったので、家では飼えなくなったんです。』と、
押し問答していると、そこに鳥のエサを買いに来た、
お客さんの対応に、店主はレジに向かった。

父と私は、ダンボールをその場に残し、
一目散に、階段を駆け下りた!
中越しに「お客さん!」「お客さーん!!」
「お客さーーーん!」と、
店主の叫び声が、こだましていた。 <続く>