スーパーマン現る? 

知人がカバンを買った。
とてもセンスが良く機能も
抜群なカバンだ!
一つ言えば
「あと一回り大きかったらなぁ〜!」
(本人談)である。
その言葉を聞いた時、
思い出した出来事があった。
それは、私がまだOLだった頃
帰りの阪急電車でのコトだ。
帰宅時と言うのもあり、
満員電車だった。
私は運良く、座って居たのだが、
目の前も、働くオジサンで、
埋め尽くされていた。
私の斜め前(殆ど目の前)の
蛭子さんをサラリーマンにしたような、
失礼だが、仕事・・出来なさそうな
オジサンが立っていた。
厚みが余りない四角いチャックで、
開け閉め出来る
有りがちな手さげカバンと、
そのカバンより一回りくらい大きな
半透明なファイル入れ(?)を
抱えていた。
電車が動き出して、オジサンは
そのカバンより一回り大きな、
硬そうなファイルの入れ物を
カバンに入れようと、
足で挟んだり、押し込もうと
それのみに必死になり始めた。
私も周りの乗客も
 あきらかに、カバンより
 大きいのに無理だよ・・
 っと言う暗黙の
合言葉が、空気の中を流れた。
オジサンは必死だ。
もぅ満員電車であるコトなど、
関係なく、何度も何度も、
入れては出して・・入れては出して・・
を繰り返している。
そうこうして居るうちにオジサンは、
カバンより、一回り大きなケースを、
無理やりにせよカバンに入れてしまったのだ!
車両の乗客も、口には出さずとも、
 おぉ〜!!と言う歓声が、
伝わっていたし、一人が拍手をしたら、
カンヌ映画祭並みのスタンディングオベーション
巻き上がったかもしれない。
私達の一体感は、どの車両より勝っていたに違いない!
すると、オジサンが、今度は、
カバンのチャックを閉め始めたのだ!!
もぅ!それは不可能だ!
カバンの角のチャックのスタート部分が、
すでにファイルの角があたっているのだから!
だがオジサンは、またも必死に、
チャックを閉めようと始めた。
周りも、すでにオジサンに注目している。
単行本を読んでる目も進まない乗客も居ただろう。
オジサンの「んっ・・!んっ・・!」と言う
漏れる声に合せて、私も呼吸し始めていた。
手に汗握る、第2ラウンドだ!
まるで、この車両は、
オジサンと運命共同体だ!
皆が「オジサン!頑張れ!」状態だ!
だが、さすがにカバンより一回り出ている
ファイルケースにチャックが閉まる訳もなく・・
でも私はそのオジサンの一生懸命な姿に
「ハッ!」とした。
きっと!きっと!このオジサンは、
以前、ファイルがカバンに入った(入れた)経験が
あるに違いないと!
固唾を呑む周りをよそにこの自信。
現にオジサンは、カバンのチャックを
閉めるコトに成功したのだから♪
またもや、車両は、
スタンディングオベーション並みの空気だ。
こんな一体感は、なかなかあるものではない。
不可能を可能にする!
オジサンは、きっとスーパーマンだ!
だが、その一体感もスーパーマン
電車を降りると簡単に消えてしまったコトもまた
悲しいかな否めない事実でもある。