100章記念!(3)2005.3.16掲載

私(スモーク♀)が中学生の頃、空前の
ゲームウォッチ』ブームが巻き起こった!
ゲームウォッチとは、運転免許証を少し大きくしたぐらいで、
厚みは1センチあるかないかである。
その中に白黒ではあるが画面があり、ゲームが出来るのである。
白黒とは言え、画期的だった。
ウォッチ・・これは小さくデジタルで時間が表示されているが、
玩具社の建前のようなモノだ。
<時計は学校に持って行っても良いがゲームは禁止>と言う
校則うまくかいくぐったのだ。
余談だが『スーパーカー消しゴム』にも私は、同じ臭いを感じる!
スーパーカーのおもちゃは学校に持って行ってはいけないが、
消しゴムなら文具なのでOK>である。だが、コレがまた、
消せない消しゴムなのだ。
本当に使用する消しゴムは、また別に持たなくてはならない。
『ゴムで、出来たスーパーカーのおもちゃなのだから!』
話の本筋に戻そう。
この『ゲームウォッチ』ブームの時、私は、中学生だったが、
今の中学生に比べると、遥かに幼かったように思う。
最近の中学生は「おしゃれ」や「ファション」に敏感だが、
私などは「ゴム飛び」に休み時間を投じていた。男の子は、
やたらとフタの多い「ふで箱」で遊んでいた。
 (昭和のにおいがプンプンするゼッ!)
そんな幼い私達は、みんなその「ゲームウォッチ」が、
欲しくて欲しくて仕方なかった。だが、
一万円前後のその代物は、一部の子が持っているだけで、
簡単には買えない。
そのため、持っている子から「借りて遊ぶ」のが普通だった。
その頃『技術・家庭』と言う授業があった。
今では、男女平等に料理なども習うらしいが、
私達の頃は、男女が別々に授業を受けた。
家庭科の授業は退屈だ。
一人が、ミシンを使っていると、その時は待つだけ、
することがない!
仮に私(スモーク♀)の苗字を、関口にしよう。
友人たちの名前は、実名で、書かせて頂く。
私だけでも仮名にすれば、逃げ道はあるだろう(?)
私と友達の和田さんは、退屈な家庭科の時間を潰すために、
木村君からゲーム内容の違うゲームウォッチを2台借りた。
その時、木村君は『もし先生に見つかっても俺の名前は、
出すなよ〜!』と言ったので、私と和田さんは、その約束を
固く守る約束をした。
私と和田さんは家庭科室のテーブルの下で、ゲームに没頭した。
そして、家庭科の先生に見つかり、没収されてしまったのだ!!
見つかっても、怒られるだけの予想が、まさか!
没収になるとは!
しかも卒業まで返さないと言っている!ヒェ〜!
木村君に『名前を出すなよ〜!』と言われたが『取られるなよ〜!』
とは言われていない。
本当に予想できないほど、子供だった。
『どうしよー!弁償なんか出来へん!』と和田さんと話てると
同じ班の武田さんが言った。
『私、今日、日直当番で、日報を持って職員室に行くから、隙を見て、
家庭科の先生の机から取って来てあげる!』
おぉ〜!力強い言葉である!
私と和田さんは、後先を考えず、武田さんにお願いした。
その時、武田さんは言った。
『でも、私の名前は出さないでね!』
ガッテン承知の助である!
そして武田さんは、ゲームウォッチを取り返して来てくれて、
私と和田さんは、木村君に無事返した。
とにかく、弁償は免れたのダ!
私の学校自体、校則が厳しかったが、担任は、
もっと厳しい先生だった。
私の学級は担任の先生が来て、ホームルームをしないと帰れない。
他のクラスは、学級委員が代行するコトもあるのだが、
私の、クラスはあくまでも「担任不在」は有り得ない事だった。
この日、担任の松原先生は、なかなか下校時刻になっても、
教室に現れなかった。
(オシリが大きいのでケツ原と呼ばれて居たが、そんな豆知識は
この入り組んだ話に関係ないので、忘れて頂きたい。)
ホームルームが始まるまでの時間は、皆んな おしゃべりをしたり
ザワザワとしていた。
木村君の親友で、机を並べている長沢君は、
とてもイラついて、大きな声で、
『俺、帰ってガンダムの再放送見るねん!間に合わへんやんけ!』
『先生、何してんねん!』
ガンダム見たい!ガンダム見たい!』などと叫んでいた。
ザワついた教室に松原先生が、現れて言った。
「和田!関口!すぐ職員室に来なさい!!」
家庭科の小西先生が、担任にチクッたのだ。
木村君と武田さんは、私と和田さんに駆け寄って来て、
『絶対、名前を出さないで!』と嘆願して来た。
もちろんである。
長沢君は相変わらず『ガンダムガンダム!』と
叫んでいた。
私と和田さんは、職員室の隣の狭くて暗い準備室に入れられた。
子供の私達は、この時点で、コワイのである。
まず、誰が家庭科の先生の机からゲームウォッチを持って行ったのか?
と聞かれた。「自分たち(私と和田さん)で、取りに行きました。」と
応えた。武田さんの名前は出さず約束は守った!
次に、私と和田、どちらのゲームウォッチで、
なぜ学校に持って来たのか?など聞かれ、私達は、武田さんとの約束を
守った事で、もぅ、精一杯で、薄暗い狭い部屋での軟禁は、
限界だった。
遂に言ってしまった。
「木村君に借りました。」
担任は、すごい剣幕で、「すぐに木村を呼んで来いっ!」と言った。
私と和田さんは、走って教室に戻り、木村君に、
名前を出してしまったコト、呼び出しが掛かったコトを告げた。
教室では相変わらず、長沢君が、
ガンダム!間に合わへん!先生、遅い〜!』と叫んでいたが、
私と和田さんと木村君は、先生の元に急いだ。
戻ると、先生はさっきより怒りを増して怖かった。
家庭科の先生に「担任が悪いんじゃぁござぁーせん?」みたいな
嫌味でも言われたのだろうか?
先生は、木村君に「木村!お前のか?」とドスの利いた声で、
言った。
私たちも怯んだが、木村君も怯んだのだろう。
思わず木村君は親友の「長沢君のです!」と、言った。
先生は「木村!長沢を呼んで来いっ!」と怒鳴った。
木村君は、教室に戻り、長沢くんに言ったらしい、
<木村>「長沢〜!お前、早く帰ってガンダム観たいんやろ?」
<長沢>「おー!そうやねん!」
<木村>「そしたらな、今から先生の所に行って、僕のです。と
     一言、言うだけで帰れるねん!」
<長沢>「ホンマ!僕のです。って言うたらええねんな?早く、
     先生のとこに連れて行ってくれや!」
・・・。理由も聞かずである。
ガンダム」を観たい!一心が伝わってくるようだ。
私達が待つ要塞いや、準備室に、木村君より早く飛び込んで来た、
長沢君は、私と和田さんの間をかき分け、先生の前に自ら飛び出して
「僕のです!」と元気よく言った。
その瞬間、私達は、この世の不条理さを、目の当たりした!
担任は、長沢君の頭をゲンコツで「ポカン!」と殴ったのダ!
先生の怒りは、すべてそのゲンコツに込められているようであった。
後ろから、見ていて長沢君の頭が、バブルヘッド人形のように
揺れていた。
先生は「木村!和田!関口!帰ってよし!クラスの他の者も、
帰ってよし!長沢だけ残れ!」
・・私達もクラスの皆んなも帰宅した。
家に帰ると「ガンダム」は放送されていた。
木村君が帰宅の時に「俺が代わりに観て長沢に内容を伝えるわ!」
みたいなセリフを言っていた。
間に合って良かった♪と思い、私はチャンネルを替えた。

夜になって、父が会社から帰宅してきた。
そして家族団らんの夕食の時に、父が言った。
「今日の夕方、長沢さんの息子さん、学校で悪い事して、
家に学校から呼び出しの電話があったらしくて、その連絡を受けて
早退しはったわ。」
長沢君のお父さんと、私の父が同じ会社だとは、
何んとなく知っていたが、そんな事より、私はその時、
とんでもない展開になっている事を父から聞かされたのである。
ある意味、その方がスゲェー!と思った。

次の日、学校に行って見ると、長沢君は、丸刈りになっていた。
本当にマルコメであった。
長沢君は、木村君から机を離していた。
木村君は前日の「ガンダム」の内容を身振り手振りで、
説明していたが、長沢君は無視をしていた。

後で、聞いた話だが、
夜中の11時頃まで、親と生活指導の先生も含めて、
長時間の話し合いをしたらしい。
長沢君の親は、
『こんな高いおもちゃを買いあたえるほどのお小遣いは渡していない!』
『そのゲーム機は、今どこにあるのか?』(木村君が持って帰った)
最終的には、「万引きしたのだろう!」と言う結論になったと言う。
長沢君は、否定も肯定もせず、ずーーーーーーーーっと、
泣いていたそうだ。
松原先生は、全てにおいて決め付けでモノを言うところが多々あったし、
あの家庭科の先生に対する、プライドもあったのだと思う。
「冤罪でもいいから解決」と言う大人だった。

しばらくして、父は会社の食堂で、長沢さんに会った時、
「女の子は、よろしいなぁ・・うちは、男の子ですんで、
何しよるか、大変ですわ!」と言われた事を少し、
嬉しそうに語っていた。

この件に私が絡んでた話を父にしたのは、それから、
ずっと後の事だ・・・。

今、私が大人になった長沢君が、
何処で何をしてるか知る由もないが「ガンダム」のDVDを
思う存分、気の済むまで観てもらいたいと、
心から願ってならない。 <終>