深夜の周防町通りにて

深夜3時半頃、
ミナミの歓楽街は、
まだまだ、大勢の人が歩いている。
帰りを急ぐ、ホステスさん
今から出勤のホストさん。
まだまだ、3件目に呑みに行こうかと言う
ホロ酔い気分のおじさん。
遊び足らない若者。
私は、そんな人込みの中、
店を抜け、買い物に出ていた。
沢山の人が行きかう歩道の、
ビルとビルの間に、
小学生、低学年くらいの
おかっぱの女の子が立ちすくんでいた。
私は、その女の子の前を通り過ぎたあと、
「えっ?」と思い
もう一度、確認した。
・・・こんな時間に、女の子?
歩いている人は、皆んな、
携帯を片手だったりで、
全く、女の子の気配に、気付いていないようだ。
もしかして、
その女の子が見えているのは、
私だけ?と言う、
何んとも言えない恐怖で「ゾッ!」とした。
私はコンビニの前まで、
振り向きながら歩いた。
コンビニの前で、
顔見知りの店員さんに
「あんな所で、こんな時間に
 小さな女の子が、何をしてるんでしょうね〜?」と
女の子を指差しながら、言うと、
「女の子ですかぁ・・・?」と
私の指差す方向を見ながら、言われた。
私は、余計に「恐怖」を感じた。
やはり、見えているのは、私だけなのかも・・・
このままでは、確かめずにはいられない!
私は、女の子のところまで、
引き返した。携帯電話を掛けるそぶりで、
女の子の横に立った。
やはり居る。
確実に見える。
これ、やばいの?
終戦後の子供の霊で、
お母さんを、ココでずっと待っているのかも、
私に何かして欲しいから見えるのだろうか?
話掛けてみようか?
そう迷っている間にも、
沢山の人が女の子に、
見向きもしないで、通り過ぎる。
私は、深く深呼吸した。
その時、
女の子が叫んだ。
 「おかぁさん!」
私は腰が抜けそうだった。
お母さんは、戦後闇市からお米を買いに
行っていた感じではなく、
明らかに、
店を終えた、綺麗にセットされた髪の毛と
キラキラとしたお洋服の、
若いホステスのお母さんだった。
私は、ヘナヘナとなった。
手を引かれて帰る女の子は、
私の方を振り返り、
ヒソヒソと母親に何か言っている。
ヤバイ!
今度は私が、幽霊だ!
私は、自分に、つぶやいた。
 
 あんた あの子のなんなのさ・・・。